14 台風の話
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○ はじめに
私達建設業は、御承知のように、外でその作業を行うことが多く、気象の影響を受けることが多々ある。
特に、台風の接近があると様々な影響を受ける。
強い風が吹いたり、波が高くなったり、雨がたくさん降ることにより、いろいろな仮設備や
構築途中の構築物が受ける影響は少なからず多い。
そんな台風についての話を記してみたい。
○ 台風について
熱帯の海上で発生する低気圧を熱帯低気圧と呼び、このうち北西太平洋上で発達し、
中心付近の最大風速が17.2m/秒(風力8)以上のものを台風といっている。
台風という言葉は、明治時代に日本に伝わったようだが、その昔中国では「タアフェン」といっており、
アラビア方面ではそれが「トウファン」といわれ、更に西洋に伝わり「タイフーン」となり、
それが日本に伝わった時に「タイフー」となって、現在に至っているといわれている。
又、台風は、明治時代前の日本では、野分(のわき)といわれていた。
台風は、上空の風に流されて動き、地球の自転の影響で北へ向かう性質を持っている。
そのため、通常東風が吹いている低緯度では、西へ流されながら次第に北上し、
上空で強い西風(偏西風)が吹いている中・高緯度では、速い速度で北東に進む。
台風は、暖かい海面から供給される水蒸気が、凝結して雲粒になる時に放出される熱を
エネルギーとして発達する。
平均的な台風の持つエネルギーは、広島や長崎に落とされた原爆の10万個分に相当する巨大なものだといわれている。
しかし、海面や地上を移動する際の摩擦により絶えずエネルギーを失っており、エネルギーの供給が無くなれば、
2〜3日で消滅する。
又、日本付近に接近すると上空に寒気が流れ込むようになり、次第に台風本来の性質を失って
温帯低気圧に変わったり、熱エネルギーの供給が少なくなり衰えて熱帯低気圧に変わることもある。
日本に上陸した台風が急速に衰えるのは、水蒸気の供給が絶たれ、更に陸地との摩擦でエネルギーを
失うからである。
日本に接近する台風は、主に、熱帯海上での発生期及び移動に伴う発達期の次段階である
最盛期やその又次段階の衰弱期のものが多い。
尚、台風は、日本特有のものではなく、強い風が吹く熱帯低気圧の発生は、世界の他の地域でも起きている。
例えば、インド洋及び南太平洋西部で発生したものは、サイクロンと呼ばれ、
大西洋及び太平洋東部で発生したものは、ハリケーンと呼ばれている。
○ 台風の発生数などについて
台風は、西暦2000年以前の30年間の平均で、年間約27個発生している。
最多は39個、最少は16個である。
日本への上陸は、年平均約3個である。
又、上陸しないまでも年平均11個の台風が接近している。
尚、台風の上陸とは、北海道、本州、四国、九州のいずれかに台風の中心が来た時をいい、接近とは、
北海道、本州、四国、九州のいずれかに台風の中心が300km以内まで近づいた時をいう。
春先の台風は、低緯度で発生し、西に進んでフィリピン方面に向かうことが多い。
夏に発生する台風は、発生緯度が高く、太平洋高気圧の周りを廻って日本に向かって北上することが多くなる。
8月は、台風発生の年間での一番多い月だが、台風を流す上空の風が未だ弱いために、
不安定な経路をとり易い。
しかし、9月以降になると、南海上から放物線を描くように日本付近を通るようになる。
この時、秋雨前線の活動を活発にして、大雨を降らせることがあり、
過去に大きな災害をもたらした室戸台風、伊勢湾台風など多くの台風は9月にこの経路をとっている。
ちなみに、8月は、台風の上陸数、接近数が最も多い月で、9月は8月
に次いで多い月である。
又、台風の平均寿命は、5.3日であるが、中には19.3日という長いものもある。
長寿台風は夏に多く、不規則な経路をとる傾向がある。
○ 台風の分類について
下記のように分類されている。
最大風速による分類
熱帯低気圧 台風 強い台風 非常に強い台風 猛烈な台風
最大風速 17.2m/秒未満 17.2以上 32.6以上 43.7以上 54.0以上
風速15m以上の強風域の半径による分類
大型(大きい) 超大型(非常に大きい)
半径 500km以上 800km以上
○ 台風に伴う風の特性について
台風は、巨大な空気の渦巻きになっており、
地上付近では上から見て反時計回りに強い風が吹き込んでいる。
そのため、進行方向に向かって右の半円では、台風自身の風と台風を移動させる周りの風が同じ方向に吹くため、
風が強くなる。
逆に左の半円では、台風自身の風が逆になるので、右の半円に比べると風速がいくぶん小さくなる。
又、台風の中心(気圧の最も低い所)のごく近傍は、「眼」と呼ばれ、
比較的風の弱い領域となっている。
台風が接近してくる場合、進路によって風向きの変化が異なる。
台風中心が、ある地点の西側又は北側を通過する場合は、「東→南→西」と時計回り
に風向きが変化し、東側や南側を通過する場合は、「東→北→西」と反時計回り
に風向きが変化する。
周りに建物などが有れば、必ずしも風向きがこのようにはっきりと変化するとは限らないが、
上記のような風向きの変化は、台風に備えての家の周りの補強を考える時の参考にはなる。
もし、ある地点の真上を台風の中心が通過する場合は、台風が接近しても、風向きは
ほとんど変わらないまま風が強くなる。
そして、台風の眼に入ると風は急に弱くなり、時には青空が見えたりすることもある。
しかし、眼が通過した後は、風向きが反対の強い風が吹き返す。
台風の眼に入った場合の平穏は「つかの間の平穏」であって、
決して台風が去ったということではない。
台風の風は、陸上の地形の影響を大きく受け、入り江や海峡、岬、谷筋、山の尾根などでは風が強く吹く。
又、建物があると、ビル風と呼ばれる強風や乱流が発生する。
道路上では、橋の上やトンネルの出口で強風にあおられるなど、局地的に風が強くなることがある。
台風が接近すると、沖縄、九州、関東から四国の太平洋沿岸では竜巻
が発生することがある。
又、台風が日本海に進んだ場合には、台風に向かって南よりの風が山を越えて日本海側に吹き下りる際に、
気温が高く乾燥した風が山の斜面を吹き下りるフェーン現象が発生し、
空気が乾いて乾燥しているため、火災が発生した場合には、延焼しやすくなったりする。
下記に、参考として、風速などについての説明表を表示する。
又、参考として、下記には風力やそれがどのような状態として
現われるのかを解説した一覧表を表示する。
ちなみに、風力とは、1805年イギリス海軍ビューフォート提督が提唱したビューフォート風力階級のことである。
○ 台風に伴う雨の特性について
台風は、積乱雲が集まったもので、暴風と共に大雨を伴い、雨は広い範囲で長時間にわたり降る。
台風は、垂直に発達した積乱雲が眼の周りを壁のように取り巻いており、
そこでは猛烈な暴風雨となっている。
この眼の壁のすぐ外は、濃密な積乱雲が占めており、激しい雨が連続的に降っている。
更に、外側の200〜600kmのところには帯状の降雨帯があり、
連続的に激しいにわか雨が降ったり、時には竜巻が発生することもある。
これらの降雨帯は、台風の周りに渦を巻くように存在している。
又、暖かい湿った空気が、台風に向かって南の海上から流れ込むため、日本付近に前線
が停滞していると、その湿った空気が前線の活動を活発化させ、大雨となることがある。
下記に、台風での大雨の例を記述する。
九州に上陸した昭和51年発生の台風17号は、それが南の海上にあった時から西日本に停滞していた
前線の活動を活発化させ、台風がゆっくり北上したこともあって、九州に上陸するまでの6日間にわたって
各地に大雨を降らせた。
徳島県木頭村では、1日だけで1114mmの雨が降り、これは1日の降水量の日本記録
となっている。
又、木頭村での総降水量は、2781mmと、東京の2年分の雨に相当する大量の雨となった。
ちなみに、1mmの雨量とは、1坪の土地に1升ビン2本
の水を撒いた状態がおおよその目安となる。
又、100mmの雨量とは、1坪の土地にドラム缶1本半
の水を撒いた状態がおおよその目安となる。
尚、下記に、参考として、雨量などについての説明表を表示する。
○ 台風と高潮について
海面は、月や太陽の引力によって、ほぼ1日に1〜2回の割合で、周期的に満潮と干潮を繰り返している。
そのため、海面の高さ(潮位)を前もって計算(推算潮位)しておくことが出来る。
しかし、台風に伴う風が、沖から海岸に向かって吹くと、海水は海岸に吹き寄せられ、
「吹き寄せ効果」と呼ばれる海岸付近の海面の上昇が起こる。
この場合、吹き寄せによる海面上昇は、風速の2乗に比例し、風速が2倍になれば、
海面上昇は4倍になる。
特に、V字型の湾の場合は、奥ほど狭まった地形が海面上昇を助長させるように働き、
湾の奥では、さらに海面が高くなる。
又、台風が接近して気圧が低くなると、海面が持ち上がるという現象が現出する。
これは、「吸い上げ効果」といわれ、外洋では、気圧が1ヘクトパスカル低いと、
海面は1cm上昇するといわれている。
例えば、それまで1000ヘクトパスカルだったところへ、中心気圧が950ヘクトパスカルの台風がくれば、
台風の中心付近では、海面は50cm高くなり、その周りでも気圧に応じて海面は高くなる。
このようにして起こる海面の上昇を、高潮と呼び、推算潮位との差を潮位偏差
(実際の潮位=推算潮位+潮位偏差)といっている。
下記に、平成8年9月発生の台風17号の時の八丈島の様子を記述する。
八丈島では最大風速28.8m/秒の強風が吹き続けたために、台風が最も接近した9月22日昼頃
には、推算潮位よりも283cmも高い潮位が観測された。
幸い、このときは小潮(上弦又は下弦の月の頃)であったこともあり、大きな高潮被害は発生しなかったが、
小潮であっても、潮位偏差が大きければ、高潮被害の発生は十分あり得ることで、油断は許されない。
確かに、大潮(新月又は満月の頃)で満潮時に、台風の接近による高潮が重なれば、
それに伴って被害が発生する可能性は高くなる。
しかし、高潮の被害は、満潮時以外にも発生しており、台風の接近が、満潮時と重ならないから
といって安心は出来ない。
又、9月頃は、1年を通じて最も平均潮位が高く
なる時期であることも、台風に伴う高潮災害を考える上で、見逃してはならないことである。
尚、潮位は、東京湾平均海面を基準面としている。
この基準面は、海抜0mともいい、山の高さなどを表す標高の基準ともなっている。
○ 高潮と台風の進路について
台風に吹き込む風は、反時計回りで、普通は進行方向に対して右側で強くなっている。
そのため、南に開いた湾の場合は、台風が西側を北上した場合には、南風が吹き続け高潮が起こる。
更に、暴風によって発生した高い波も沖から押し寄せ、高潮に高波が加わって、海面は一層高くなる。
実際、過去50年間に潮位偏差が1m以上となった高潮は、ほとんどが、東京湾、
伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海、有明海などのように遠浅で、南に開いた湾で発生している。
台風の気圧や風の強さから、どのくらいの潮位偏差となるかを予測することは可能である。
推算潮位や満潮の時刻も計算されているので、計算から求まる潮位偏差予測値と推算潮位を合算して、被害が発生する
可能性を判断出来、その結果は、各種情報や高潮注意報、警報として発表されている。
平成7年発生の台風12号は、関東地方に接近して、八丈島で932ヘクトパスカルと非常に低い
中心気圧を観測、各地で風速30m/秒を超える暴風が吹いたが、首都圏直撃は免れ、関東地方では、
銚子で潮位偏差77cmを観測したにとどまった。
しかし、もし台風が関東地方を直撃していた場合、東京で2.1m、千葉市で3.3mという伊勢湾台風クラスの
潮位偏差が発生していたというシミュレーション計算の結果もあり、海岸に近いところでは、高潮による
浸水に備えた避難場所、避難経路の確実な把握、認識が最重要事項となる。
○ 台風と高波について
風が吹くと水面には波が立ち、周りへ広がる。
波は、風が吹いたことによってその場所に発生する「風浪」(ふうろう)と、他の場所で発生した
風浪が伝播したり、あるいは、風が静まった後に残された「うねり」の2つに分類される。
上記の風浪とうねりを合わせて「波浪」(はろう)と呼んでいる。
一般に、うねりとなって伝播する波は、遠くへ行くに従って波高は低くなり、周期が長くなりながら
次第に減衰するが、高いうねりは、数千kmも離れた場所で観測されることもある。
波には、風が強いほど、長く吹き続けるほど、吹く距離が長いほど高くなるという3つの発達条件がある。
台風は、この3つの条件を満たしており、例えば、台風の中心付近では、10mを超える高波
(有義波高)になることが多々あり、しかも、風浪とうねりが交錯して、
複雑な様相の波を呈することになる。
ここで、上記にある有義波高について記述する。
波浪予報などで使われている波高は、有義波高と呼ばれる波の高さである。
これは、ある点を連続的に通過する波を観測した時、波高を高い順に並べ直して、
全体の1/3までの波の高さを平均した値である。
目視で観測される波高は、ほぼ有義波高に等しいといわれており、一般に波高という場合には、
この有義波高を指している。
台風の接近と共に、周辺の海域では、その移動に伴って次々と発生する波がうねりとなって伝播してくるため、
いろいろな方向からうねりがやってきて重なり合う。
そこで風が吹いていれば、風浪が加わり、更に複雑な波になる。
台風による海難の発生状況は、台風のコースやその時の状況で大きく異なるが、例えば、
昭和54年に、温帯低気圧に変わりつつあった台風20号により、北海道近海で衝突9隻、転覆3隻など合計
37隻が遭難し、66名の死者・行方不明者が出たことがあった。
これは、台風が、温帯低気圧に変わりつつある、あるいは変わった、といっても決して油断
できないことを示している。
南に開いた湾の場合は、台風が西側を北上すると、南風が吹き続けるので、特に高潮が発生しやすくなり、
それに加えて、暴風によって発生した高い波浪が沖から打ち寄せ、海面は一層高くなる。
一方、台風が東側を北上すると、北風となるため海岸付近では風浪は小さいものの、少し沖へ出れば、風浪は高くなる。
この時、南からのうねりがあると、互いにぶつかり合って、複雑な波が発生しやすくなる。
昔から、夏から秋にかけて太平洋に面した海岸に押し寄せる高い波(うねり)を「土用波」
と呼んで、高波に対する注意を促していた。
これは、この時期の台風が、太平洋高気圧の周りを廻ってから日本に近づくので、その前に
うねりの方が早く日本にやってくることをいったものである。
同じような波の状態が続く時、100波に1波は有義波高の1.5倍、1000波に1波は2倍近い
巨大波が出現(2時間に1波程度)する。
この巨大波のことを「一発大波」などともいう。
確率としては小さいものの、台風によるしけが長引くほど、巨大波が出現する危険性が増すわけで注意が肝心である。
台風に先行してやってくる「土用波」のようなうねりに対しても、上記と同様に注意が肝心である。
尚、気象庁では、波の高さを説明する際には、4mから6mの波を「しけ」、
6mから9mの波を「大しけ」、更にそれ以上の高い波を「猛烈なしけ」
と呼んでいる。
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